消費者庁は、ボタン電池の誤飲に注意するよう呼びかけています。
消費者庁には、子どものボタン電池の誤飲に関する事故情報が平成22年4月から平成26年3月までの間に90件以上寄せられており、そのうち11件は入院することとなった事例です。昨年度は、消費者庁に報告されただけで34件と過去最悪となりました。
電池の中でもリチウム電池は放電電圧が高く、電池を使い切るまで一定の電圧を保持する特性があります。子ども用の玩具だけではなく、時計やタイマー、LEDライト、体温計、家電製品のリモコン、電卓など日常生活で子どもが簡単に手にできる様々な製品に幅広く使われています。
電池を飲み込んだ際に、消化管に接触した電池から電流が流れると、電気分解により電池の外側にアルカリ性の液体が作られ、30分から1時間という短時間で消化管の壁に損傷が起こります。そのため早く取り出さないと、消化管に潰瘍ができたり穴が開くなどのおそれがあります。特に、コイン形のリチウム電池は、平たく幅が広く、食道等に停滞しやすいだけでなく、電池を使い切るまで他の電池より高い電圧をそのまま保持する特性があるため、誤飲した時の危険性はより高くなります。また、胃内では、胃液で電池の金属皮膜の腐食が起こります。電池の中身(電解液)自体にアルカリ性液を使っているアルカリマンガン電池などでは、アルカリ性の液体が流出して消化管の壁を損傷するおそれも指摘されています。
写真2 1歳女児のレントゲン写真
写真3 1歳男児の内視鏡写真
写真2と3は、コイン形リチウム電池が食道内に停滞して化学熱傷を起こした事例として小児外科誌で報告されたレントゲン写真と内視鏡写真です。1歳前後の子どもがコイン形のリチウム電池を誤飲すると、食道にとどまることが多いと考えられます。
事故事例
- 【事例1】 1歳/男児
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タイマーの蓋を取って遊んでいるのを母親が発見。中にあるはずのボタン電池が見当たらず受診。腹部レントゲンで胃にボタン電池を確認したため、マグネットカテーテルにて摘出。ボタン電池は黒色に変色していました。
- 【事例2】 0歳/女児
- おもちゃが壊れ、中のボタン電池を誤飲。最初に受診した病院で腹部に電池があることは確認できましたが、マグネットカテーテルがなかったため他院に搬送、摘出。
- 【事例3】 2歳/男児
- 電池を入れておくケースの蓋が開いていて、丸い電池が1個見当たらずに受診。レントゲンにて電池を確認、摘出手術。手術後ICUへ。組織破壊が進んでいたため、食道に穴が開きかねない予断を許さない状態にて約1か月入院。電池は起電力3Vの新品のコイン形リチウム電池。
- 【事例4】 1歳/男児
- 引き出しの中に収納していたLEDライト付き耳かきが放り出してあり、子どもがコイン形リチウム電池を誤飲したことがすぐに分かりました。病院にて9時間かけて取り出しましたが、放電の影響で気管と食道に穴が開き、2か月入院。しばらくは食事も取れませんでした。
消費者庁が0歳~3歳までの乳幼児の保護者3248人に対し「ボタン電池等を使用する製品に関する認識・乳幼児のボタン電池等の誤飲事故に関する認識について」のアンケートを実施しました。
乳幼児が製品からボタン電池等を取り出し飲んでしまう事故が起きていることを知っていると答えた人は約8割でしたが、ボタン電池等の誤飲による重症事例の存在を知らない人が全体の6割を超えました。そして、子どもが「ボタン電池を飲んでしまった」「なめていた」「手にしていた」「飲んでしまったかもしれない」いずれかの経験があると答えた人は418人、全体の1割以上もありました。
ボタン電池誤飲の予防
- ●どの製品にボタン電池が使用されているかチェックし、電池蓋が外れやすくなっていないか、蓋が壊れていないか、簡単に電池が取り出せるような構造になっていないか確認しましょう。そのような危険性があれば、必ず子どもの手の届かない所に置き、必要があれば電池蓋をテープで止めるなどの処置をしましょう。
- ●未使用、または使用済みボタン電池は絶対に子どもの手の届かない場所に保管しましょう。成長に伴って手が届くようになってきます。定期的に確認しましょう。また、兄姉がボタン電池を取り出し、子どもの目の触れる所に置いてしまうこともあります。兄姉に、下の子がボタン電池を飲み込んでしまう可能性があることを教えることも大切です。そして、廃棄するときも、家からごみとして出すまで、必ず子どもの手の届かない所に保管しましょう。
- ●電池交換のために一時的にボタン電池を子どもの目の付く所に置いてしまい、保護者が目を離した隙に子どもが手に取ってしまい誤飲したという事故報告もあります。子どもの寝ている間など、子どもの目に触れない場所・時間で行いましょう。交換した電池もその場に置いたままにしないようにしましょう。
もし、子どもがボタン電池を飲み込んでしまった、または鼻や耳の穴に入れてしまったときは、最悪の場合、死に至るおそれもあるので一刻も早く医療機関に行くことが重要です。その際、電池の種類や状態を確認できれば医師に伝えましょう。また、飲んだかどうかはっきりしない場合でも、レントゲンを撮ればボタン電池の有無や電池の停滞部位が確認できますので、誤飲の可能性がある場合には必ず受診しましょう。
みなさんのご家庭ではどうでしょうか?電池蓋のチェックをしていますか?いつの間にか手が届くようになった引き出しや棚に、ボタン電池が使われている製品を置いていないでしょうか?定期的にチェックをして、誤飲事故が起きないようにしましょう。
資料・画像:消費者庁、国民生活センター