硬い素材の長い物

日常的にお子さんの身の回りに存在し、その製品に尖った部分があって、ある程度の硬さがあれば刺傷につながる可能性があります。口や顔の近くで使用するものであれば、眼球・耳孔・鼻孔・口腔・口腔を経た咽頭などへの刺傷の危険性が高くなります。子どもの口腔の刺傷に関与するものとしては、歯ブラシ・箸・割り箸・フォーク・鉛筆・綿菓子の芯の割り箸・おもちゃの太鼓のばちなどが代表的なものです。
みなさんのお子さんは「硬い素材で長い物」を持って歩きまわったり、歩きながら歯磨きをしていませんか?

歯ブラシ

平成22年12月から25年1月末までに50件の事故が報告されています。

【事例1】 2歳/男児

室内で歩きながら歯磨きをしていて、畳の部屋で前方へ転倒しました。
右咽頭に裂傷。

【事例2】 1歳/男児
兄に追いかけられて歯ブラシをくわえたまま走っていて、ソファにぶつかりました。歯ブラシが喉に刺さり、嘔吐、鼻と口から出血。右咽頭、口蓋垂の横に1cmの裂創。
【事例3】 1歳/男児
洗面所で高さ50cmの椅子の上に立って歯磨きしていて転落。歯ブラシのヘッドの部分から3cmほどの所で2つに割れてヘッドの部分が口腔内に刺さりました。左下の臼歯内側、軟口蓋近傍に裂傷。

また、命に関わるような恐ろしい事故も起きています。

【事例4】 1歳/男児

歯ブラシをくわえたまま転倒。咽頭に刺さった歯ブラシを母親が引っ張ったところ、先端が咽頭の深部に残ってしまった。転んだ時に相当な力が加わり、ヒビが入ったために抜いた時に容易に折れたと考えられました。また血管のそばに入り込み、一歩間違えば大出血になるところでした。
術後も咽頭後隙に膿瘍が形成され、長期入院と抗菌薬の静注治療となりました。

【事例5】2歳/男児
歯ブラシが刺さった直後は出血もなく軽傷に見られましたが、しばらくして元気がなくなりました。口腔内は小さな損傷しか認められませんでしたが、歯ブラシの刺入部から空気が粘膜下に入り、皮下、咽頭後壁、縦隔内に気腫が広がったもので直後から喉頭の浮腫も進行し、1週間気管内挿管が必要に。対応が少し遅かったら窒息や、致死的な感染を起こしていた可能性も推測されます。

消費者庁 国民生活センターより

ストロー付コップ

日本小児科学会に報告されています。
ストロー付コップをくわえながら歩いて転倒し、口腔内を刺創したという事故です。事故のあったストロー付コップは、コップの蓋から外に出ているストロー部分が約7.5cm。ストローはPET樹脂でできていて硬く、曲がらないタイプ。横倒しになっても中身がこぼれない構造になっていて、ストローはコップの底にほぼ固定されている状態でした。鼻腔への貫通はありませんでしたが創底は筋層に達しており、形成外科にて全身麻酔による口蓋挫創の止血・創縫合を施行しました。

一見、症状が軽度でほとんど損傷がない場合でも、細長い異物での咽頭外傷では深部を損傷して重篤になる可能性があります。また、くわえたまま全身の体重が加われば簡単に刺さって脳に達する危険もあります。

歯ブラシは、喉を突かないよう考えられたリング状の歯ブラシも売られています。(写真はお子さん用のリング歯ブラシと保護者の方の仕上げ磨き用のセットの例)またストロー付コップも、蓋から出ているストロー部分が短く、ストローが柔らかい素材のものを選ぶなど、生活の中を見直してみましょう。お子さん1人で使用するのではなく、保護者の方がそばに付き添い注意を払うことが大切です。また、保護者の方が気づかないうちに、お子さんが持って歩き回っていた!なんて事がないように「硬い素材の長い物」の保管場所にも気をつけたいですね。
お子さんが事故に遭わないよう、お家の中をもう一度チェック!してみましょう。